世界の垣根を取り払う人に
なってほしい
- 外国語学部 ロシア語学科
- 林田 理惠 教授
ロシア語を学ぶことで何ができるか
ロシア語=ロシア在住者の言語でしょうか?いいえ、ロシア語圏は、きわめて多様な文化を内包しています。旧ソビエト圏はもちろん、イスラエル、アメリカにもロシア語話者はいます。本学科の教員が意識しているロシア語は、多くの国や地域で話される広義のロシア語です。かつて、語学修得の目標は「ネイティブのように話せる、聴ける、書ける」ことでした。しかし、今、その考え方はもう通用しません。求められるのは「言語を使って何を成すことができるか」「ロシア語を学ぶことで、世界で何ができるか」という視点です。
どんな時も現実とつながる生きた学びを
ロシア語学科の1年目は、新型コロナウイルス感染拡大という困難な状況で終了しました。その中で、私たちはできるだけ実践的な学びに力を入れるべきだと考え、モスクワ市立大学の学生との日露共同授業をオンラインで実施。現実社会とリンクするテーマを選び、日本側はロシア語で、ロシア側は日本語でディスカッションを行い、最終回はオンラインでのプレゼンテーションにも挑みました。
訪日ロシア人が激減し、自身のロシア語運用能力を評価する機会が少ない1年次生にとって、世代の近いモスクワの大学生と会話できたことは大きな自信になったようです。彼らの堂々たる発表には目を見張るものがありました。今後は京都という地域の特性を生かし、国内でのフィールドワークにも可能な限り力を入れたいと考えています。
観光で日本を訪れる人たちとの交流のほか、在留ロシア語母語話者の人たちのサポートも進めていく予定で、具体的には在留ロシア語母語話者の子どもたちの学習支援や、保護者のための翻訳サポートなども検討中です。
多言語化する世界の中で
現在、例えばEU圏では職場でも、街中でも、さまざまな言語が当たり前のように混じり合い、飛び交っています。そんな中で、欧州を中心に、複数の言語を身につけることで複数の文化を理解し、交流する「複言語主義」という考え方が広がりつつあります。
グローバリゼーションが進む中、複言語主義はますます浸透していき、話者数も多く豊かな文化的背景をもつロシア語は、学ぶべき言語として重要な選択肢の一つとなるでしょう。学生に身につけてほしいのは、目的を持った活動を実現するためのロシア語運用能力です。相手の文化をきちんと知り、偏見なく自文化を客観視できる力を持つこと。単に語学が上達することが重要なのではなく、言葉を通じ、社会や生活に根ざした活動が実現できることが重要なのです。学ぶことで、しっかりと思いを伝え合える人になることで、世界と日本の垣根を取り払うグローバルな人材をめざしてほしい。学生の皆さんに大いに期待しています。(2021年4月)