京都外国語大学・京都外国語短期大学

生きる力は、
ケニア人に教わった

  • 2016年度JICAボランティア アフリカ・ケニア派遣
  • 兵庫県立香住高等学校教員
  • 安藤 洋之 さん
  • 英米語学科 2007年度卒業
  • 2018.08.20

ケニア・ワムム更生学校へ

教員になって3年が過ぎた頃、新しいことにチャレンジしてみたいと思うようになり、JICA(国際協力機構)ボランティアに応募しました。配属先はナイロビから車で約2時間、マクタノ地区にあるワムム更正学校です。(以下ワムム)

10歳から17歳の窃盗など軽犯罪歴のある子どもたちの社会復帰を後押しする全寮制の教育施設で、生徒数は約100人。ケニアでは貧しさから盗みをはたらいてしまう子どもが多く、また大麻と知らずに親から町で売ってくるように言われて、捕まってしまう子どもたちもいます。私は体育指導の他、更生を促すための職業訓練やエイズなどの感染症対策、キャリア教育の支援活動を行いました。

校庭で。三食たべられて安全に過ごせる子どもたち

職業訓練のアートクラスでは、岐阜県の小学校と話し合い一枚の大きな壁画を完成(*1)

褒めてあげることで、更生を

ワムムでは体罰が頻繁に行われていて、子どもたちが学則を破ると、先生はスワヒリ語で「キボコ」という木の鞭で叩きます。子どもが泣き叫んでも鞭を止めない先生や、キボコだけが子どもを変えることができると信じている先生もいます。私は体罰が日常になっていることに、ショックを受けました。体罰で子どもは変わらないことを伝えたいと思って、叱り方や褒め方のコーチング方法を提案してみたところ、「体罰を無くそう」と校長先生から先生方にお話をしてくださり、少しずつですが体罰が減りました。

地元の人や保護者、本人たちですら、ワムムを少年刑務所だと思っていました。「ここは刑務所でなく教育施設。ワムムっていい学校だよ!」ということを知ってほしくて、年に一度の親御さんの学校訪問の時に、子どもたちの学校生活をパネルにして見てもらうようにしました。

「自分は犯罪者だ」と思っている子どもたちに、ワムムで更生していくことを、自己肯定してほしいと願っていました。そこで、子どもたちの活躍を記事にして、学校新聞を校舎に掲示。先生やみんなから「頑張ったね」と、褒めてあげる機会をつくりたいと思ったからです。子どもたちは、何度も何度も学校新聞を見返して、喜んでいました。

球技大会で県大会優勝し、7人が選抜されたことを掲示したり、子どもたちの活躍に、ひと言先生が褒める言葉を添えるように工夫

アフリカとのつながりを持ち続けたい

私がペットボトルや、読み終わった雑誌を捨てると、子どもたちは「なんで捨てるの?」と拾っていきます。子どもたちは牛もさばけるし、拾ってきた時計も直せ、農業も知っています。子どもたちのたくましく生きる力には脱帽です。

一方で、アフリカは支援慣れをしていて、外国人を見ると挨拶の次には「何くれるの?」と聞いてきます。与えることは簡単ですが、みんなでルールを作って物を管理する大切さを教えることは難しいことです。靴の支給や図書館をつくる活動をしましたが、私がいなくなっても、ケニアの人たちだけで継続していけるような仕組み作りを、いつも考えていました。

ワムム以外にも、KESTES(*2)の活動をしています。私が支援をサポートしていた女の子が奨学生の審査に落ちてしまい、教育の向上支援の厳しさを目の当たりにしました。誰もが経済的な不安なく勉強できる環境をケニアに広めていく活動を、続けていきたいと思います。

ケニアでの思い出は数えきれないほどあります。もどかしさを感じながら、文化の違いに悩むこともありましたが、温かい気持ちにしてくれたのもケニアの人々でした。日本へ帰国し、教員の仕事に復帰してからは、授業の一環としてスカイプでナイロビの高校生たちと文化交流を計画しています。これからもアフリカの人とのつながりを大切にしていきたいと思っています。

ワムムの少年たちにソーラン節を教えて、音楽祭に参加しました

(*1)一般財団法人ジャパンアートマイルが行っている活動。海外と日本の学校が「平和」や「環境」などのテーマについて学び合い、世界に訴えるメッセージを一枚の壁画にして共創する国際協働学習です。

(*2)KESTESは成績・人柄ともに優秀であっても経済的な理由により就学の機会を失われているケニアの中学生、高校生を対象に、青年海外協力隊員の有志が奨学金を支援している活動です。

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