京都外国語大学・京都外国語短期大学

「人」を育て、次世代に
博士号第1号の重みと責任

  • 博士号(言語文化学)
  • 近畿大学准教授/京都外国語専門学校・非常勤講師
  • 森山 智浩 さん
  • 大学院 博士後期課程2007年度修了
  • 2019.07.10

学ぶ姿勢を変えた「三日月」

高揚感も誇らしい気持ちも、湧いてきませんでした。ただ、ただ、「重いな」と…。2008年3月、数十人の教員が見守る最終諮問・審査会を経て、博士号(言語文化学)を取得できました。博士後期課程が開設され、「第1号」。今後、後進のために恥じない活躍をしなくてはならない。翌月に近畿大学の教員となり、11年間。今も、当時の誓いを胸に、教鞭をとっています。

高校生の時は、弁護士か心理カウンセラーになりたいと思っていました。いずれも言語の運用が基本であることに気づき、「むしろ、自分はその前提となる言語の産出プロセスに興味があるのではないか」と考え、1993年4月、英米語学科に入学しました。

学部時代は、自我が強かったですね。ある日の授業で、「先生にとって、難しい英単語は何ですか?」と生意気な質問。先生は受け流すような感じで、「lunulaかな」(爪半月:爪の白い部分)と答えられました。その英単語が「月」を語源とし、「三日月」の姿・形を投影していることに感銘を受けてからは、英語力のさらなる向上を図るだけでなく、言語学の研究にも目を向け始めました。一方、文武両道を目指し、合気道部の主将として関西大会で1位金賞を、選手宣誓を務めた世界選手権で3位銅賞を獲得したのが良き思い出です。

学部時代、試合に臨む様子(右から2人目)

“情熱”込めた博士論文

就職氷河期ということもあり、学部最終年は100社以上就職活動しました。そして、卒業後1年間働いて学費を貯め、1年制の外国語専攻科(現在は同科廃止)に進学。その後大学院修士課程に入り、認知言語学を中心に種々の言語理論を学びました。2年間で修士課程を終えましたが、当時、大学院に博士後期課程はありませんでした。

ちょうどよかった。貯金が底をついていた。「研究を深めながら、学費や生活費を貯めることができる」「将来、進路指導ができるよう、様々な社会経験を積もう」と発想転換。博士後期課程の開設まで、4年間待つ間に、訪問販売や介護病院スタッフ、予備校講師など、何でもやりました。食費を切り詰め、1日100円レベルで生活したこともあります。ご飯を醤油で炒めて、それをおかずにご飯を食べるとか…。

2005年4月、1期生として博士後期課程に入りました。同期は6人。自分はほかの学生より才能がないから、2倍も3倍も研究しました。現在に至るまで、ほぼ毎日3~4時間の睡眠時間です。学位論文題目は「英語における語彙概念の応用研究」。同時期に、指導教官らと共著本(1123ページ)も出版しました。今でも「よく、それだけの教育・研究量がこなせますね?」と聞かれますが、情熱だけが取り柄です。

大学院学位記授与式の全体記念撮影(最前列左から5人目)

「学び」と「就職」を結ぶ

2008年4月、近畿大学法学部の特任講師となり、専任講師を経て、2011年に准教授となりました。同時にこの14年間、週1回、専門学校で英語を教え続け、編入学コース開設にも尽力。指導した学生4人が「欧州国際科学プロジェクト論文コンペ:学術貢献賞」を受賞したこともあります。母校への恩返しの一つです。

法学部では英語学・言語文化学ゼミを担当。主体性・自主性を旗印に、「専門知識の獲得」「実践的プレゼンテーション能力の育成」「キャリア教育の徹底」の3本柱でゼミ活動を展開しています。社会貢献活動として、ルーマニアでの草の根活動、国際学術交流に尽力しています。(別項で詳細を紹介)

ゼミでは、言語理論を活用し、ESや面接対策、企業分析・集団討論の方法論など、進路実績に力を入れています。200人以上のゼミ卒業生によるOB会の支援もあり、グローバル企業やエアライン、公務員など数多くのゼミ生の希望を実現しています。学術を散策し、希望の進路にたどり着くことが、学生時代の醍醐味ではないでしょうか。『人』を育て、次世代にのこす。この想いこそが、教壇に立つことが許される唯一無二の資質であると、自分を戒め続けていきたい。

2018年、ゼミ学生とともに(近畿大学で)

 

【ルーマニアでの草の根活動】

ルーマニア語が東欧で唯一、ラテン語に由来していることに興味を持ち、2008年、現地を訪問。財政的に豊かでなくても陽気な国民性で、力強く生きている姿に感銘し、その後、年1回のペースで日本の小中学校にあたるジェネラルスクールで「対日理解促進活動」となる授業を開催した。他方、アルジェシュ県知事や各市長、国立大学学長・諸研究者、ルーマニア文部大臣、研究大臣等との交流関係が次々と築かれ、現地の国立大学・ユネスコ・ルーマニア正教会などで計21回の学術講演、国際会議の主賓として計14回のスピーチをそれぞれ行った。現在、「ルーマニア―日本教育科学協会」(Romania-Japan Association of Education and Science)の共同理事長を務める。

ルーマニアの大学での講演会

【業績】(2019年現在、ルーマニアでの活動含む)

1 研究・著書等 学術論文計52本(国外10・国内42)著書計20冊(国外6・国内14)、翻訳計12本(国外12)、受賞計21回(国外19・国内2)、海外講演会計21回、海外国際会議ゲストスピーカー計14回など。

2 ゼミ活動 海外学術論文コンクールなどの受賞者計75人、トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムなど国際活動の選抜者計24人、多くの卒業生を航空業界、グローバル企業・一部上場企業、公務員に送り込む。

 

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