京都外国語大学・京都外国語短期大学

お笑いは日中共通の文化
「好き」から自分の興味が見えてくる

  • 外国語学部中国語学科 教授
  • 苗 芡 さん
  • 大学院 博士後期課程2009年度修了
  • 2019.11.11

山口百恵さんにあこがれて

「わたしのせいなら 許してください…」。北京市の自宅居間のテレビから、甘く、せつない歌声が流れていました。山口百恵さんが主演、自ら歌った連続ドラマ「赤い疑惑」の主題歌「ありがとうあなた」の一節です。

ドラマは白血病を患った17歳の少女を通して、生と死、愛の喜びと悲しみを切々と描いたサスペンスで、1975年、日本で放映されるや最高視聴率30%を記録し、大反響を呼びました。中国でも、改革開放政策が始まって間もない1980年代初め、国営放送が全国に放送し、一躍、大ブームとなりました。中学生だった私も、家族も、放送のたびに、食い入るように見ていました。当時、映画やテレビに出てくるのは、日本兵や日中戦争のことばかり。「こんなドラマが日本では流行っているんだ」と衝撃を受け、百恵さんの髪形やファッションに夢中になりました。これをきっかけに、日本に興味を持ち、日本語を学び始め、続けてきました。

先日も、京都市内で開催された彼女の息子さんのコンサートに行ってきました。10代の自分を思い浮かべながら、歌声に聴き入りました。うっとりと。

実は太極拳は特技。中国の学生全国大会で3位になったことも

留学で知った日本人の繊細さ

当時、日本企業がどんどん中国に進出しており、日本語を学べば就職に有利と思い、北京第二外国語大学に入りました。卒業後、2年間旅行会社で働きましたが、もっと学びたいと、母校の大学院に入り、研究の傍ら、大学生に日本語を教えていました。学生時代は勉強ばかりしていたわけではありません。小さい頃より太極拳を習っており、学生の全国大会の「型」部門で、3位になったこともありますよ。

大学院の修士課程を終え、2004年から1年間、交換留学生として、京都外大に留学しました。日本に住み始めたら、次第に、言葉を通じて日本人の繊細な“心”が分かってきました。人との付き合いを大事にしたり、常に相手のことを考えて行動したり、周囲への気配りを怠らない。どこにいても、心地よい雰囲気に包まれている感じがするんです。

2006年4月博士後期課程入学式で

交換留学を終えたのち、帰国せず、大学院後期課程に進み、2009年度に言語文化学の博士号を取得することができました。テーマは言語学的な観点からの、日中の話芸の比較研究です。昔からお笑いが好きだったから、自然と研究テーマにたどり着きました。

中国語を学ぶ楽しさ

日本のお笑いのように、中国にも話術や芸で観客を笑わせる伝統芸能があります。落語や漫才にあたる「相声(シャンシャン)、コントのような「小品(シャオピン)」などです。落語と相声はどちらも歴史が長く、「相声」は中国の無形文化遺産に指定されています。違っている点は、落語が親子や夫婦の人情を表現した噺(はなし)が多いのに、「相声」は社会的な風刺や奇抜なストーリー展開が多いことです。

2018年1月、新年行事で

大学院時代は、落語や相声を題材に、観客を笑わせるテクニックとして、どんな表現技法を使って噺をしているかという分析に取り組みました。日中の笑いを研究のテーマに選んだのは、笑いが身近なものであり、日本の若者に中国文化への興味を持つきっかけになると思ったからです。私自身、山口百恵さんのドラマや歌が中国で流行したことがきっかけで日本に興味を持ち、日本語を学びました。

語学はツールです。検定試験に合格するだけではなく、言語をどう使いこなし、やりたいことにつなげていくのかが大切です。学生には、笑いに限らず、様々なテーマに触れて、中国文化への興味を深め、中国語を学ぶ楽しさを知ってほしいですね。

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