京都外国語大学・京都外国語短期大学

極寒の地ロシアで夢叶う
日本語教師として日々奮闘

  • イルクーツク国立大学 日本語教師
  • 中川 愛理 さん
  • 大学院博士前期課程実践言語教育コース日本語教育領域 2017年度修了
  • 2020.03.09

大学での学びから決意

今思い返せば、高校3年生の冬、当時の担任の先生に「中川さん、京都外国語大学の日本語学科はどう?」と勧めてもらったことが、私の人生を大きく変えるきっかけでした。富山県の小さな町で生まれ育った私は、幼いころから海外への興味や憧れが強く、担任の先生からのアドバイスを受け、「京都外国語大学か。受けてみよう!」と考えるようになりました。

きっかけはこんな簡単なことでしたが、後悔したことはありません。在学中には、オーストラリア国立大学での日本語教壇実習や、オランダ国立南大学への派遣留学など、積極的に海外での日本語教育に携われるチャンスを掴みにいきました。オランダへの留学中に「将来は、海外の大学で日本語を教えたい!」と考えるようになり、その夢を実現させるため、大学卒業後は京都外国語大学大学院へ進学しました。

大学院の修了を控えたある日、インターネットでロシアの大学へ日本語教師を派遣するプログラムを発見。「ロシア語もできないし、日本語教師としての経験も少ないし、きっと合格はできないだろう…」と、半ば諦めながら選考試験を受けました。しかし結果は、まさかの合格。それも、赴任地は想像もしていなかったシベリアのイルクーツクという街でした。

合格通知を見てすぐにイルクーツクの場所を調べてみると、「シベリア」「冬には最低気温がマイナス40度にも達する」という普段聞きなれない言葉が並んでいました。不安もありましたが、「ま、なんとかなるだろう」と気持ちを切り替え、2018年9月、日露青年交流センターからの派遣で、シベリアの地にあるイルクーツク国立大学へ飛び立ちました。

バイカル湖の氷のベッドで。大自然を満喫しています

慣れないやり取りで悪戦苦闘

シベリアでの生活は私が想像していたよりも遥かに厳しいものでした。まず、シベリアの冬は皆さんの想像を遥かに上回る寒さです。自分の吐いた息でまつ毛や髪の毛、口元を覆っているマフラーまで凍ってしまいます。外も思うように歩けません。

それに加えて、海外で働く日本語教師ならではの苦労もありました。海外で働く日本語教師は、個人契約の方はもちろんですが、私のように国際団体から派遣されていても、赴任後は自分で大学と交渉する必要性が出てきます。大学との交渉には苦労がたくさんありました。例えば、契約書に何度サインをしても、翌週にはその契約書が無効になるということもありました。理由は、契約書にミスがあった、ビザの関係で無効になった、など色々言われました。赴任して数か月経っても終わらない契約書のやり取りに気が遠くなったのを覚えています。

また、授業のある教室はいつも変わるので、授業時間が始まっても自分の授業教室がわからないことが多々ありました。もういっそのこと、大学前の広場で青空教室をしようかと思ったほどです。

ここで少しイルクーツク国立大学を紹介します。11学部・7つの研究機関を持つ本学は、2018年に創立100周年を迎えた東シベリア最古の大学で、最大規模の大学。学生数は18000人を超え、毎日たくさんの学生が学んでいます。

大学前にあるキーロフ広場。春には多くの花を見ることができます

いつも助けてくれるロシアの人たち

七転八倒な毎日を過ごしていますが、もちろん、ロシアでの生活は苦労ばかりではありません。皆さんはロシア人と聞くと、どんなイメージを持たれるでしょうか。「ロシア人は冷たい」と、こんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。しかし、私の知っているロシア人は「困っている人に手を差し伸べる心の温かい人たち」。私がロシアに来たばかりの頃も、学生は「私は先生にロシアを好きになってもらいたいです」と優しい言葉をかけてくれ、いつも私のことを助けてくれました。日本では絶対に有り得ない、想像もできないようなことがロシアでは多々起きます。そんな時、ここで生活している人はお互い助け合い、生きているのです。

一筋縄ではいかないロシア生活ですが、次のさらなる大きな目標達成に向けて、もうしばらくここイルクーツクで奮闘していきたいと思います。

月に1回行っている日本文化教室で学生と。2019年を表すそれぞれの今年の漢字を書いてもらいました

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