京都外国語大学・京都外国語短期大学

禍(わざわい)が去れば、
文化は必ず花開く

  • 外国語学部イタリア語学科
  • アンドレーア・レオナルディ 教授
  • イタリア・ボローニャ出身
  • 2021.07.09

禅の世界が東洋への扉を開いた

私の若いころは、今と違って日本のアニメや「かわいい文化」はイタリアでは普及しておらず、日本に関心を持つ入り口は、武道あるいは禅の文化に絞られていました。私は後者です。西洋哲学を勉強していたので、東洋の禅の世界観について興味を持ち、京都で学びたいと留学を決意。2年で帰国するつもりが6年におよぶことになりました。その後、そのまま京都でイタリア語を教える機会に恵まれ、研究と教育の日々を続けて今年で26年目になります。「実在とは何か」ということが、私の研究テーマです。

人の心は物体ではないので、客観的に数字で説明できません。だから人は、私たち自身は一体なんなのか?どこからきたのか?どこへいくのか?といった事柄を探求するのです。

私はまずは西洋哲学でそれを深めていき、さらに京都で西田幾多郎の哲学を研究してきました。西田は仏教、禅宗を踏まえて西洋哲学を学んだ、明治から昭和にかけての哲学者・学者であり、仏教と西洋哲学を一つに融合させようと努めました。私もその考え方について研究を続けています。

論文は主に英語で書きますが、日ごろ書いたり、話したりする言葉は、日英伊3ケ国語。日本語で考え、話す時と、イタリア語で考え、話す時では、頭の中の論理構造が変わるようです。日本語で考えている私は、イタリア語で考える普段の私とは別人であるように感じることさえあります。そういう時に直訳の限界を痛感するのですが、複数の言語で考えることで、自分の世界観が広がり、リッチになっていくようにも思うのです。研究も教育ももっと視野を広げて学び続けたいし、学生にもイタリアの言葉や文化を学び、自分の世界が広がる楽しみを感じて欲しいと考えています。

もっと良い世界が作れると信じよう

いま少し心配なのは、大人としての自分を形成する時代に十分にコミュニケーションがとれないまま、ステイホームで日々を過ごす若い人たちのことです。彼らは、アフターコロナの時代がやってきた時に、どういう影響を受けているのでしょうか。学生の皆さんの中にも、将来に不安を感じている人がいるかもしれませんが、必ずこの日々は終わります。ウィズコロナの毎日にあって、私たちはずっとこの状況が続くように錯覚してしまいますが、今までの歴史を見ると、伝染病の流行、収束は何度もある。病の大流行の後は、必ず立ち直る。むしろそれまでにない新しい考えが生まれたことも多いのです。14世紀、ヨーロッパでペストが猛威を振るい、全人口の3分の1あるいは2分の1が減少したとも言われていますが、その後、イタリアルネサンスという新しい芸術文化が開花しました。

ポストコロナには、もっと良い世界が作ることができる。また、今までの世界がもっていた良いところをやり直せる。そう信じて、がんばっていきましょう。

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