人と人をつなぎ
サステナブルな
暮らしを提案
- 兵庫県豊岡市地域おこし協力隊/任意団体COARS共同代表
- 中田 樹 さん
- フランス語学科 2017年度卒業
フランス留学を通じて得た出会い
「樹からサッカーを取ったら何が残るの?」。親からの質問で将来について考え、自分の強みを身につけたいと、京都外大のフランス語学科に入学。1年次の春休み、初めてフランスに短期留学をしました。その時のことは今でも鮮明に覚えています。パン屋さんでうまく話せず、欲しいパンが買えなかった。とても悔しい思い出です。しかし、ここでくじけてたまるかと勉学により力を入れ、それから毎年フランスへ留学するようになりました。
京都外大生として最後となった4年次の留学では、印象深い出会いがありました。きっかけは、ホームステイ先のお父さんとの会話。お父さんはよく庭に落ちている枝や廃材を拾い集めており、私が「何に使うの?」と聞くと「ブリコラージュだよ」。その言葉に興味を持って調べると「ありあわせのもので、何かを作る、なんとかする」という意味でした。買えばなんでも手に入る時代に、手持ちのもので何かを作る。それってすごいことなのではと思いました。その概念自体は、フランスの文化人類学者レヴィ=ストロースによって提唱されました。彼の著書を読み、自分なりに考えるようになりました。
持続可能な社会を追究しようと大学院へ
帰国後は「このまま就職していいのか」との思いから、1年間休学。あちこち旅をして国内外に大勢の友人・知人ができました。知人の紹介でフランスで就職しましたが、そこはゴミが大量に発生する職場。「自分はフランスで働けているけれど、ゴミを出すことに貢献してしまっている」という理想と現実のギャップにモヤモヤや葛藤がありました。
そこで「もっと社会に貢献できるようにもう一度学び直したい」という考えに至り、フランスの大学院への進学を決意。ブリコラージュという言葉に出会って以来、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会に疑問を抱き、また、循環やサステナブルについて勉強したいという思いが募っていた私には、最も納得のいく選択でした。ベルギーとの国境に近いリールという街で、リールカトリック大学大学院政治学部の農業政策と持続可能な開発コースを専攻し、食品ロスと消費者意識をテーマに修士論文を書きました。
熱中できる仕事を見つけた喜び
さまざまな人と出会い、刺激を受け、常に「やりきった、没頭した」と言えるくらい、どんなことにも全力で取り組んだ学生時代。この素晴らしい経験の数々は、ずっと私の支えとなってきました。現在は、フランスで学んだことや考えたことを糧として、兵庫県豊岡市で「地域おこし協力隊」の一員として活動しています。具体的には、来年度の「Zero Waste*」をテーマにした量り売りショップのオープンに向けた準備や、学生や地域を巻き込んだ「知恵や知識をつなげて循環させるラボ作り」などに取り組む一方、任意団体COARSという組織を立ち上げ「食や農業」をテーマとした地域特産品の販路開拓・拡大、マルシェ(市場)や食育レクチャーなどの企画運営にも携わっています。農家の方や各分野の専門家に日々さまざまなことを教えていただきながら、人と人をつなぐ仕事ができていることに、とても喜びとやりがいを感じています。
*Zero Waste ― 「ゴミをゼロにする」ことを目標に、資源をできるだけ消費しない生産・流通方法を実践する活動