京都外国語大学・京都外国語短期大学

困難な時代だからこそ
世界を知る必要がある

  • 外国語学部 ブラジルポルトガル語学科
  • 上田 寿美 講師
  • 2023.11.02

ポルトガル語との出会い

私はエッサ・デ・ケイロースという19世紀の作家の作品を中心に、19世紀から20世紀の文学を時代背景、思想なども含めて幅広く探究しています。その一方、最近は21世紀の作家の翻訳にも取り組み、文学史の講義を行ってポルトガル文学の現代までの流れを紹介するようになりました。私がポルトガル語を学ぶようになったのは、京都外大に入学してからです。「大学で新しい言語に挑戦したい」との思いから始めました。所属したゼミでは、同学年の学生はたまたま私一人。先生は辞書の編纂に携わるポルトガル語の権威で、私は第一人者からマンツーマンで講読や翻訳を教わることになったのです。優しく面白いお人柄でしたが勉強となると厳しく、大変であると同時に非常に学びが深まりました。
2年次の終わり、ポルトガルのコインブラ大学で1カ月間の語学留学に参加しました。その時に見たポルトガルは、まさに私のイメージしていたヨーロッパそのもの。古い建物が残り、都会を少し離れれば風情ある農村風景が広がります。タイムスリップしたような美しい世界に感動し「しっかり勉強して、必ずもう一度来よう」と誓ったものです。

初修者も既修者も満足できる授業を

教える側になった今も、もっと学びたいと考えています。学生からいろいろ質問されるとうれしいですね。私の勉強につながりますから。ポルトガル語を学ぶ人には、ブラジルにルーツがあって既に話せる人と、初心者だけれどサッカーや料理などブラジル・ポルトガル文化に興味がある人という2グループがあります。英語しか学んでこなかった人は、動詞の活用の多さや、名詞に性別があることに最初は驚きますが、慣れるにつれて、この言語の面白さを理解していくようです。また、すでに幼い頃からブラジルの言葉を話してきたという人には、ポルトガルで使われる表現を伝え、興味が広がるように努力しています。
新型コロナウイルスが流行する前は、滋賀県や兵庫県で、ブラジルにルーツのある子どもたちやその保護者のサポートをした経験があります。こうした活動のおかげで、ブラジルにルーツを持つ学生の背景が、少し理解できているかなと思います。

誰かとつながる気持ちを

フェルナンド・ペソアという20世紀初頭の詩人は、大航海時代、海に出て行って犠牲になった船乗りたちの行動を「それは意味あることであったか/なにごとであれ/意味はあるのだ/もし魂が卑小なるものでないかぎり」と歌っています。かつては世界の中心で、栄華を誇っていたポルトガル。その言葉の奥には、詩人が生きていた現実への思いが込められていました。それは「今のポルトガルは困難な時代だが、その中で新しい発見をしていきたい」というメッセージです。
私たちも、紛争や病気など外国のことを考えると、楽観的な見方ができない時代を生きています。しかし、これからも私たちは世界とつながって生きていかねばなりません。相手を知り、新しい発見を共に積み重ねていくためにも、外国語を学ぶことが今こそ必要なのだと感じています。

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