京都外国語大学・京都外国語短期大学

文化継承と未来への教育
マレーシアで見つけた
自分なりの答え

  • 青年海外協力隊 コミュニティ開発隊員
  • 永岡 愛 さん
  • 英米語学科 2010年度卒業
  • 2018.03.02

自然と調和した生計支援

学生時代はフリーガイドクラブに所属し、土曜日にある金閣寺や清水寺での英語ガイドに向けて、毎日部活動に勤しんでいました。そんな私は今、青年海外協力隊のコミュニティ開発隊員として、マレーシアのサバ州で活動をしています。日本からの直行便は週に2本、約6時間かかります。

サバ州はまだまだ発展途上の州。州都のコタキナバルは都会ですが、少し離れると田舎の風景が広がっています。生物多様性が豊富なことでも有名で、東南アジア最高峰のキナバル山や、サンゴの豊富な海があるので、自然が大好きな人にとっては最高の訪問先です。

任期は2017年1月から2年間。活動内容は、自然保護区内にある村において、自然と調和した生計手段の確立を行うこと。具体的には村の女性グループの手工芸品の生産・販売支援や、村への外部の方のホームステイ実施のお手伝いをしています。

日本占領乗り越え、ともに歩む

村に泊まっている日は、朝起きるとまず川で顔を洗い歯を磨きます。川のせせらぎを聞きながらの洗顔は、最高に気持ちがいいです。午前中は、村の小学校へ様子を伺い、イベントの打ち合わせや、村のお友達の家へ行って、おしゃべりをします。午後には、手工芸グループの集まりへ行き、新しい商品のアイディアを共有したり、一緒に商品作りを行います。マレーシアでは日本と似たような食材が手に入りやすいので、基本的には日本食を自炊していますが、時々、自然に実がなっているランブータンやパパイヤをタダでもらって、南国果物を頬張っています。

マレーシアは雪が降らない国なので、映画やドラマを通じて、雪に憧れをいだいている人が多いです。たいていの人に「日本はいつでもどこでも雪があるのか!?」「雪はおいしい?」と聞かれます。”四季”というものがないので、「春の次が冬で、その次が夏?」というようなトンチンカンな質問をされたりします。

マレーシアは戦時中に日本に占領された過去を持ち、日本兵に祖先を殺められた人もいます。「ここは日本兵がいた時に滑走路として使われていた道だよ、だから真っ直ぐなんだ」「この葉っぱは食べると痒くなるんだけど、(嫌がらせのために)わざと日本兵に食べさせてたんだよ」という話をよく聞きます。日本に苦しめられていた過去があっても、「昔は昔、今は今だから。今は日本も日本人も大好きだよ」と現在・未来を見てともに歩んでくれるサバの人たちが、私はとっても大好きで、皆さんに何か残せたら良いなと思って活動しています。

「活動意義は何?」 自問自答の日々

日々感じることは、“開発って何だろう?”ということ。この村は、道路は未舗装、ほとんどの家は竹や板製、体は川で洗うことが多く、現金収入は少ない…と、マレーシアの都会に比べると発展途上の土地です。けれども、住む家があり、米や野菜は村で自給自足をし、家族皆が暖かく笑顔で…これ以上の幸せってないのでは?と感じます。

もっと協力が必要な場所があるのでは? 私のような外部の人間の、ここでの活動意義は何? 赴任当初はかなり悩みましたが、1年が過ぎた中での答えは「文化継承」と「未来への教育」です。

この村の手工芸品は、伝統的な編み方で竹を編んで作られる小物入れやコースターなど、とても素敵です。昔は誰でも色んな柄を編めたけど、今は限られた人しか編めません。このままだと誰も編めなくなっていたかもしれませんが、商品として販売価値があると理解してもらえれば、今後も竹を編む技術は引き継がれるでしょう。実際に、手工芸品グループのメンバーで、編んだことのない柄に挑戦する人も出てきました。

また、ホームステイを受け入れる際には、村に唯一ある小学校や教会(村民の多くはクリスチャン)との交流も推進しています。異文化交流は子供達にとっても刺激となり、学習意欲も増すのではないかと考えています。私と関わりを持ったことで、将来日本へ行ってみたいな、と考えてくれる子がいるのも、とても嬉しく感じています。

任期は残り約1年、大きな開発はできずとも、村の人々の笑顔を守る活動を少しずつ続けていきます。村のインスタグラムも、よろしければ是非ご覧下さい。

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