京都外国語大学・京都外国語短期大学

「もちはだ」を若者にも
ダサい肌着からの脱却

  • 肌着メーカー ワシオ株式会社
  • 鷲尾 岳 さん
  • 中国語学科 2012年度卒業
  • 2018.03.10

実家を継ぐ決心

小さい頃から薄着で、周りの人が寒そうにしているのが不思議で。今になって、「もちはだ」を着ていたからだと気づきました。もちはだは、実家のワシオ株式会社が生み出す、ダサいけどめちゃくちゃ温かい肌着。冒険家植村直己さんも、ワシオの靴下を南極に履いていったくらい。当たり前のようにそばにあって、特別な思いを抱くことはなかったし、実家を継ぐ気もありませんでした。

中国語学科を選んだのは、これから世に出るには中国を避けて通れないと思ったから。早く中国語をマスターしたいと、授業は一言も聞き漏らさないように真剣に受けました。卒業後は「すぐ中国で働ける会社」を条件に、中国・天津の日本企業に就職。入社してすぐ日本でみっちり事業計画書の書き方を教わり、その計画を元に3カ月後には単身中国へ。現地の日本料理店に清酒や焼酎を販売しました。ゼロから事業を立ち上げ、損益計算書など数字の見方を身に着けたことがきっかけとなり、起業の道を模索していました。

日本へ帰国したとき、父と母の会話から、会社の業績が良くないことを知りました。折しもその冬は暖冬で、もちはだが売れない。このまま見ぬふりをして家族や従業員が路頭に迷ってもいいのか? 自分の心に聞いたら答えは「NO」。実家を継ぐと決心し、2016年2月に入社しました。

扶養家族は「40人」

入社してみると商品リストがなく、数字管理もできていない。危機意識ゼロの状態でした。絶望感のなか、リストや帳簿をデジタル化し、誰もが見られる状態にするなど、少しずつ変えていきました。突然入社してきて、これまでのやり方にケチをつけて言いたい放題言う。しかも社長のボンボンなので言い返しづらい。従業員からすると、腹の立つ相手だったと思います。信頼を得るために、誰よりも働いて、結果を出すことにこだわりました。まだ27歳、結婚もしていないですが、「扶養家族が40人増えた」という気持ちです。

ところで、うちの会社は暖房をあまりつけていなくて、寒いんです。でも、みんなもちはだを着てるから大丈夫(笑)。

笑って死ぬために

いま取り組んでいるのは、もちはだのリブランディングです。若者から中高年層まで、幅広い世代が選ぶ冬場の日常着として浸透させたい。人に着ているところを見せられないダサい肌着から、「おしゃれなトップス」に進化させるためにクラウドファンディングを利用。50万円の目標額に対し、650万円の寄付が集まりました。twitterで寒い写真を投稿してくれた人にもちはだをプレゼントする「#もちはだレスキュー」キャンペーンも実施。SNSに苦手意識を感じる社内の空気が変わりました。「寒かったらもちはだ着ればいいのに」と自然と口をついて出てくる、そんなシーンをイメージしながら、ファンを増やしています。次は消費者と一緒に作るもちはだ企画を進めています。形になったら絶対面白いので、お楽しみに。

僕の人生のテーマは、「笑って死にたい」。死ぬ瞬間に、ああ、いい人生だったなと思いたい。だから、言い訳を考える時間があるなら、やってみる。後悔しない生き方をしているので、いま隕石が落ちてきても、たぶん笑っていられると思います。

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