移民の歴史を語り継ぐ
ドキュメンタリー制作
- 2017年度「学長表彰・優秀賞」受賞
- 国際教養学科4年次生
- 福田 実咲 さん
- 和歌山県 星林高等学校出身
1枚の写真が、ファミリーヒストリーの扉
和歌山県出身で、カナダが好き。そんな何気ない共通点から、河上幸子先生のゼミ「和歌山美浜町・アメリカ村 地域創生」(※1)に参加。私の班の役割は、明治期にカナダへ2千人余りの移民を送り出した村の歴史を伝えること。深く考えず参加したゼミでしたが、あるご家族の「ファミリーヒストリー」に自分が大きく関わっていくなんて、想像もしていませんでした。
4年次生になると、プロジェクトリーダーに指名されました。私はリーダーに向いてない性格。前に出るタイプでなかったので、難しさを感じながら手探りでリーダーを務めました。
2017年5月、1枚の写真から私たちのゼミの調査が始まりました。第二次世界大戦時、カナダの日系人収容施設で撮られた写真には、日系移民4名の日本人が写り、「アメリカ村出身Isao Hamade(濱出勲)」の記載が。ネットを駆使しながら調査し、行きついたのがトロント在住の濱出勲さんのお孫さん、「ステファンさん」(※2)でした。
試しにFaceBookで名前を検索してみたら、偶然にも本人を探し出せました。早速、調査内容について連絡を取り、ステファンさんは来日。カナダから遠く離れた和歌山の村で、ご先祖様のお墓を探し当て、墓石に手を合わせるステファンさんの姿は、感動的な光景でした。
たった一人で取材にチャレンジ
私にとってリーダーを務めることはチャレンジでしたが、さらに大きなチャレンジが訪れました。9月、先生と私は、トロントのステファンさんファミリーに会って、ドキュメンタリー制作の取材をする予定でした。しかし、諸事情により、私一人でカナダへ行くことに。「どうしよう、そんな大役、一人では無理」と考え悩みました。
ここで行かなかったら、後悔するかも。今までの自分だったら、諦めていたかもしれない。けれど、プロジェクトのため、たくさんの人にこのヒストリーを知ってもらうため、私はトロントへ行くことを決意。たった4日間の強硬なスケジュール、ビデオ収録もあり、とても不安でした。
温かく出迎えてくださったステファンさんご家族にお会いして、私の不安は和らいでいきました。取材をやり遂げることが出来きたのは、ステファンさんと、ご家族皆さんのおかげです。
先人の偉大さ、若い世代に
美浜町の村人たちが、未開の地・カナダに渡って移民を成し遂げたことが、どれだけ大変なことであったか。「先人たちの偉大さ」を、若い世代へ語り継ぐため、このプロジェクトの山場である「ドキュメンタリーの制作」に、秋から取り掛かりました。
と、言っても私は、今まで動画制作なんてまったくやったことが無くて。動画のアプリを使って、学内のメディアセンターの方に教えてもらいながら、試行錯誤で動画を作りました。構成はみんなで考え、先生に相談しながら何とか編集を終え、11月に美浜町で上映。「美浜町アメリカ村の住人でありながら、初めて知ることも多く、貴重な上映会に感謝します」と、村の人たちから感想の言葉を頂き、涙がでるほど嬉しい思いでした。
英語バージョンの制作にも取り掛かり、これからは、後輩たちがプロジェクトを引き継いで、締めくくりである「トロントでの上映」、そして映画祭出展を目指しています。
【密着!訪日外国人】和歌山アメリカ村からトロントへ:濱出家ファミリーヒストリー 調査編、合宿編、トロント編の3部構成です
(※1)アメリカ村 和歌山県美浜町三尾地区の通称。明治期カナダへ2千人余りの移民を送り出した村。
(※2)ステファン・ハマデさん カナダ・トロント在住。和歌山県美浜町アメリカ村にルーツを持つ27歳の日系5世。