生きた英語と向き合い
発見を楽しんでください
- 外国語学部 英米語学科
- 吉川 裕介 准教授
英語の構文の仕組みを探究
私の専門は英語学です。研究テーマは「形式と意味との間にミスマッチ」が生じる構文の仕組みを明らかにすること。英語ネイティブが無意識のうちに使っている表現を収集、分析し、使い方の基準を明示する研究です。
例えばWay構文と呼ばれる構文を見てみましょう。Sally drank her way through a case of vodka.という文は「サリーはウォッカを1ケース飲みきった」という意味になります。ここでのdrinkは自動詞にもかかわらず、目的語位置にher wayという名詞句を取っています。
また、a case of vodkaをa glass of lemonade(レモネードをグラス1杯)にすると英語らしくない表現になります。なぜなら、このWay構文は「困難性」を構文の意味として持っていると考えられているからです。
私の研究は、なぜW a y 構文に困難性が帯びるのかを動詞やone’s wayの意味機能に注目することで構文のメカニズムを明らかにすること。そして英語ネイティブが持つ無意識的な言語直感を「目に見える規則」として記述することです。
気づく、間違えることから学問は始まる
ゼミの学生には日頃から「言語理論も学びながら、それと同じくらい実際に使われている英語表現にとことん向き合ってください」と言っています。今まで学んできた表現や文法と違う表現にぶつかったとします。大切なのは「あれ、違うぞ」という気づきです。この小さな違和感が知識を深める大きなきっかけとなります。
高校まで受験勉強で英語に接してきた皆さんは、間違えることに臆病になっている気がします。間違えることは恥ではなく知の扉を開くきっかけです。「なぜ?」に答えてくれる授業が大学にはたくさんあります。自分の知らない「ことばの奥深さ」に触れて、新しい発見を楽しんでみましょう。
視野を広げるために今できること
どうか「知識をリスペクト」してください。この知の恩恵を最大限に享受できるのが大学の授業であり、読書だと思います。知識を得るというのは、研究者たち、著者たちが問に挑み、答えを出すために費やした時間や人生を得ること。これまで手にしてきた教科書の内容は、先人たちが人生をかけて引き継いできた知識の歴史そのものです。知識の背後に先人たちの費やした人生が重なれば、おのずと勉強は楽しくなります。
今はまだ外に出て視野を広げるのは難しいけれど、大学の授業や読書を通じて自分の世界を広げていってほしい。そうすれば、再び外に出て景色を見たときに、世界がより鮮やかに映ることと思います。