京都外国語大学・京都外国語短期大学

ムスリムの温かさに触れた、
1年間のクウェート留学

  • クウェート大学 留学
  • 国際教養学科3年次生
  • 齊藤 祐史 さん
  • 静岡県出身
  • 2017.01.24

アラビア語の魅力 「しました 私は サッカーを」

僕は2015年9月から約1年間、中東アジアにあるクウェートに留学し、アラビア語を学びました。

アラビア語との出会いは、高校2年生の時。学校の掲示で知ったセミナーに参加したことがきっかけです。セミナーでは、パレスチナ人の講師からイスラエル建国やシオニズム運動といった「パレスチナ問題」について話を聞きました。僕はとても強い衝撃を受け、自分が中東圏の事について全く知識が無いことに気付いたんです。当時、進路について悩んでいたのですが、このセミナー参加で「アラビア語やイスラム教世界について研究しよう!」と決めました。すぐに専攻か副専攻でアラビア語が学べる大学をインターネットで探したところ、第二外国語でアラビア語が受講できる京都外大を見つけたんです。英語やフランス語、スペイン語などさまざまな学科がありましたが、言語にとらわれずより客観的な角度からイスラム教が学べそうな国際教養学科を受験し、無事合格することができました。

僕にとってのアラビア語の魅力はいろいろありますが、特に文法構造です。「私はサッカーをしました」という日本語の文章があるとします。英語の文法だと構造的には「私はしました、サッカーを」となりますよね。だけどアラビア語では「しました、私はサッカーを」と動詞が先になるんです。初めてみた語順や「このニョロニョロした文字にもちゃんと構造があるんだ」と思った瞬間、勉強が急に楽しくなりました。そこで大学でのアラビア語学習のほかに京都市内で開講されている講座も受講。アラビア語習得に精進しました。

今後のアラビア語学習の進め方を考えていた頃、アラビア語の先生から在クウェート日本国大使館が行う「クウェート政府奨学金留学生」という留学制度を教えていただきました。インターネットで調べ、すぐに応募。そのあとの電話面接では、志望動機や「なぜクウェートなのか」「なぜアラビア語を学びたいのか」といった質問をアラビア語・英語・日本語で受けた結果、採用していただくことになりました。そして1年間大学を休学し、クウェートへ留学。現地ではクウェート大学の言語センターで9ヵ月間アラビア語を学び、残りは同大学のサマーコースに参加して文法やイスラム教諸国の政治システム、詩歌を中心にアラビア語文学について知識を深めました。

困ったときの「イン・シャ・アッラー」 

おそらく皆さんは、アラブ諸国をイメージすると「治安が悪く、危険」というのが最初に思い浮かぶと思います。

確かにトルコやイラク・シリアはテロも多く危険ですが、実際に行ってみて、クウェート・ヨルダン・ドバイなどは比較的安全でした。ラマダーン期間中やその終了を祝うお祭り「イド・アルフィトル」、モスクの礼拝がある金曜日など人出の多い日は出歩かないといった、多少の知識、特にイスラム教に関する事を理解しておけば、リスクを避けることができます。

クウェートの人たちは温厚でおおらかな方が多かったですね。日本人のように、ストレートに物事を言わず、相手のことを思いやって発言する印象でした。

ただ、とても困ったことがありました。携帯電話が水没して修理に出した時、とても時間がかかって。いつになったら終わるんですか?と聞いたら、「イン・シャ・アッラー(神の思し召すままに)」と返ってきたんです(笑)。クウェートの人は、困ったときやめんどくさい時は「自分のせいじゃない」と、よくこの言葉を使います。結局1ヵ月後に返事があり「直らない」と言われました…(笑)。

クウェートには親日な方が多く、日本語を学ぶ人もたくさんいて、SNSを通して人脈が増えました。中には会ったことがないのに「日本語を教えてほしい!」と言ってくる方も。今でもインターネットを使ってやり取りしています。

クウェートで強く印象に残っているのは「ディワニヤ」と呼ばれるお茶会です。これは基本的に男性限定の社交場的なもので、家族・親類や友人などで集まり、お茶やご飯を食べながら話やゲームなどして親睦を深めます。これはほぼ毎週開かれていて、ディワニヤ用の広間が各家庭にあるほどでした。僕もさまざまなグループのディワニヤに参加しましたが、メンバー同士とても仲が良く、クウェートの人たちは仲間意識の共有を大切にしていることがわかりました。

そしてイスラム教の「貧しい人・困っている人を助ける」といった、慣習を感じることもありました。

ある日体調が悪くなった時に、クウェートの方に車で送っていただいただけでなく、治療費まで支払っていただいたんです。他にも断食で有名なラマダーン中のこと。実は、この期間ずっと絶飲食するのではなく、日没から翌日未明の間だけ飲食することができます。この時間帯にスーク(市場)に行くと、人種・貧富・信教にかかわらずどんな人にでも無料で食べ物が振る舞われていて、イスラム教の特徴を見ました。

留学期間中には、いろいろな所に行きました。隣国のヨルダンでは、塩分濃度が高く人が浮くことで有名な死海で泳いだり、ぺトラ遺跡やジェラシュ遺跡、紅海北部にあるアカバ・ビーチなど観光しましたね。あと、クウェートにある動物園に行きました。アフリカや中東圏に生息する動物が多く、ホッキョクグマなど寒冷地の動物は全くいませんでした。クウェートは年間通して気温が高いというイメージがありますが、冬場は寒いです。雪も降りました(笑)。これはとても珍しいとのことでしたが、それくらい冷え込むことがあるそうです。なので、「夏と冬で展示される動物が変わる」と教わりました。

一番心に残っているのが、イラクによるクウェート侵攻で被害を受けた住居「アルクレイン・ハウス」です。ここは破壊された住居や車、イラク軍の戦車が当時のまま残されており、案内板で住民の様子などが生々しく説明されていました。現在もシリアやトルコだけでなく、世界中でテロが起こっています。日本でもテロがいつ起こってもおかしくない状況です。それを防ぐために出来ることは何だろうと考えるきっかけになりました。

ムスリムの皆さんを、日本でもてなしたい。

僕はこの留学で出会い、お世話になったクウェートの皆さんに恩返しがしたいと思っています。留学して初めて知ったのですが、ムスリム(アラビア語で「イスラム教教徒」のこと)が日本を訪れても、食べられるものが少ないことです。イスラム教では、戒律で豚やそれに由来する調味料、アルコールが入った料理・加工食品は食べることを禁止しています。現在、世界の総人口の4人に1人はムスリムだといわれています。2020年開催の東京五輪では、ムスリムの皆さんも多く来日するでしょう。そこで僕のこれからの目標は、日本の観光や食品、特に食肉関連の企業に就職し、クウェートの方をはじめムスリムの皆さんが快適に過ごせるような環境を作っていこうと考えています。

この服は、ヨルダンで買った「ディスターシャ」です。頭にかぶっているのは「ゴドラ」というスカーフと、それを止める「アガル」と呼ばれる輪です。そして現地で買った「聖典クルアーン(コーラン)」です。内容が難しくて、注釈書がないと理解できない箇所があるんです。今、日本語訳されたものを読んで内容を理解したあと、辞書を引きながら原書を読むつもりです。

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